Q.夫名義のマイホームに住んでいます。離婚後の住宅ローン支払いを、2人の子供の養育費代わりとして夫に支払い続けてもらおうと思っています。
離婚理由が夫に原因があったということと、子供の学校を変わらずに居させたいということで、私と子供がこのままマイホームに住み続けるということで互いに合意しています。
養育費の相場を養育費算定表を見ながら確認したところ、養育費の相場と住宅ローンの支払額がほぼ同じだったので、養育費を毎月もらう代わりに、今までどおり住宅ローンを支払ってもらいながらマイホームに住み続けるということにしました。
しかし、もし夫の住宅ローン返済が止まってしまったら、家から出ていかなくてはならないです。ローン支払いができなくなるのなら、養育費を受けとることもできなくなると思います。
注意点はどんなことですか?
A.注意点は、将来の夫の支払いが滞った場合のことです。
将来の支払い遅滞リスクをできるだけ回避するためには、住宅ローンは妻名義に名義変更し、養育費は毎月もらう方が良いです。
以下は、元銀行員で住宅ローン診断士および行政書士の立場でお答えします。
離婚後の住宅ローン支払いを、養育費の代わりとして受け取るときのリスク
離婚協議の際に、養育費の毎月受け取る代わりに、夫が住宅ローンを毎月支払うという内容で離婚協議書を作成する場合が少なくありません。
妻側としても、毎月養育費の支払いがあるかどうか確認する手間もなく、もし入金が遅れても催促などして、コンタクトを取りたくない相手に連絡する負担を避けるというメリットがあるので、一見良いアイデアのように感じられるかもしれません。
しかし、あなたが居住し続ける費用(住宅ローン費用)と、養育費相当額が同額であるからと言って、これを相殺するように決済することには注意が必要です。
少なくとも離婚協議書には、養育費として金額がいくらなのか、その請求権はいつ発生するのか、など請求権の発生時期と金額を、細かく記載しておくべきです。
そして、残念ながら離婚後に夫が養育費を遅滞なく支払っている状況は、養育費の取り決めをしている母子全世帯の約半数の56.6%というデータがあります。
厚生労働省の『平成28年度 全国ひとり親世帯等調査結果の概要』によると、養育費の取り決めをしている母子世帯の割合は42.9%(前回平成23年度調査時37.7%)、そして母子世帯全体での養育費の受給状況は、父親から現在も養育費を受け取っている世帯の割合が24.3%(同19.7%)です。
つまり、養育費を取り決めしていても、その後養育費を受け取っている世帯の割合は、約半数の56.6%ということです。
今回のケースの場合、養育費が滞ると同時に、マイホームに住み続けることに懸念が生じることになります。
離婚協議時に、可能な限り、自宅名義や支払い名目は分かりやすく、分離や一本化できるようにすることが重要だと思います。
離婚後の自宅と住宅ローン名義の理想的最終形
当センターでは、離婚後の自宅と住宅ローンの名義は、可能な限り自宅に住み続ける人の名義に一本化するべきであると提案しています。
たとえば今回のケースですと、自宅と住宅ローンの名義は、自宅に住み続けるあなたの名義に変えておくことです。
特にあなたが今仕事をしているのなら、最も夫の協力を得やすい離婚協議時に、手間のかかる作業はやっておくべきです。
離婚後数年たって、手間のかかる作業を依頼すると、単に相手の腰が重くなりなかなか作業が進まない可能性もあります。
そして、養育費の請求権という観点から考えると、養育費を請求する権利は、妻であるあなたではなく、子供自身の持つ権利であるからです。
養育費の請求権は子供自身が持つ権利であるにもかかわらず、離婚協議の際に、養育費を自宅に住み続ける費用として充当してしまうと決めてしまうことにも疑問が残ります。
離婚後の住宅ローン支払い遅滞リスクを考える
仮に、離婚後数年たって、あなたのいまの夫が自己破産せざるを得ない状況になったとします。
このとき、夫名義の自宅は、競売等で処分せざるを得なくなることはもちろん、あなたに資力があって自宅を買い取りたいと申し出たとしても、自己破産の場合、資産は債権者に平等に分配されます。
したがって、自宅に住んでいるから自分で買い取りたいというあなたの希望はかなえられなくなります。
そして、さらに養育費を住宅ローン支払いと、一緒くたにしてしまうことにより、養育費の請求権と請求時期が曖昧になってしまうリスクが生じます。
養育費の請求時期
養育費とは、本来、毎月毎月請求する権利が発生します。
ところが、養育費支払いを住宅ローン支払い債務と混同させてしまうと、自己破産により免責された債務に、養育費が含まれるのかどうか、非常に紛らわしいことになります。
これらについては、離婚協議書にしっかりと記載すれば良いのかもしれません。
しかし、養育費とは子供が持つ権利であるということには代わりありません。
さらに、住環境は、子育てに過程で変化させることも可能です。
離婚時にたまたま養育費の金額と、住宅ローンの支払い金額がほぼ一緒であるからと言って、子供を育てる環境を、夫の支払い環境に委ねて固定させるという選択は慎重になるべきだと思います。
少なくとも、あなた名義で住宅ローンが利用できる手段を考えるべきです。
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