Q.調停中です。夫名義の自宅を自分名義にしたいのですが、私が非常勤勤務の看護師で契約社員なので、住宅ローンはあきらめた方が良いと諭されています。
子供の学校や友人の環境を考えると、今のまま住み続けたいのですが、マイホームを夫名義から私名義に変えるためには、住宅ローン審査に通る必要があります。
しかし、弁護士さんからも『契約社員だから住宅ローンは無理でしょう』と言われてしまいました。
契約社員の場合、住宅ローンに通ることは無理なのでしょうか?
A.契約社員だからといって、必ずしも住宅ローン審査に通ることは不可能ではありませんし、契約社員の方を住宅ローン審査に通した実績もあります。
弁護士さんのいうこともごもっともで、会社との雇用関係はたしかに契約社員という扱いなのでしょう。
しかしながら、住宅ローンを審査する金融機関は、雇用契約書を見て審査するわけではありません。
各々金融機関で、安定した収入を得ているという解釈が違いますし、その中には契約社員として長く継続して勤務している方を審査に通す金融機関ももちろんあります。
以下は、住宅ローン診断士の立場からお伝えします。
住宅ローン審査での確認事項
住宅ローンの審査は、以下4点を中心に、 個人の属性を診断して審査します。
金融機関によって違いはありますが、大きな基準としてはどの金融機関もほぼ同じであると考えて良いと思います。
- 雇用形態
- 勤続年数
- 年収
- 信用情報
これらの情報をもとにして、
①安定した収入が見込めるか
②長期に継続してローン支払いができるか
③支払い管理がしっかりしており支払い遅滞のリスクがないか
などそれぞれの項目について、懸念がないかどうか審査します。
契約社員であるということで懸念されることは、①安定した収入が見込めるかの懸念を抱かれる可能性があるということです。
契約社員としての勤務形態の状況
たしかに、数ヶ月間の短期間の契約社員であって、更新する可能性の無い雇用契約であると、以降安定的な収入が得られるとは見なされない可能性が高いです。
しかし、おなじ契約社員でも、会社の社会保険に加入しており、3年以上勤務している場合であるとなると、長期に継続して勤務していると見てくれる金融機関も少なくありません。
特に、看護師さんのように国家資格保有者であって今後も長く勤務することが見込める職業にお就きであれば、金融機関からの信頼性所感も高くなると考えて良いと思います。
また、離婚後に勤務時間を変更してこれまでよりも長く勤務することについて、勤務先と合意が取れているのであれば、その契約書面も住宅ローン審査において、安定した収入を裏付ける資料となる可能性もあるでしょう。
大切なことは相手方との名義変更の合意
当センターの基本的なスタンスは、自宅の登記名義とローン利用の名義は、住み続ける人に一本化すべきというスタンスです。
このときに、意外とこじれてしまうことは、相手方の名義変更することについての同意です。
登記名義が相手方100%の場合はもちろんのこと、相手方の持ち分が含まれていれば、名義を変更するにあたり相手方の手続きの協力が必要になります。
弊所での経験でも、それまで住宅ローンは支払いたくないという理由で、妻側のローンが利用できるなら今すぐにでもして欲しい、と申し出ていたところ、妻の住宅ローン審査が通って名義変更が現実として見えた途端に、名義変更を渋る方がしばしば見られます。
その理由は様々なのでしょうし、それを予測できたからと言って対処の仕様も困難なのですが、あくまでこちらで出来ることはしっかりとしておくべきです。
中には、審査条件に合うような勤務期間を経過する都合で、離婚後1年経ってからの住宅ローン利用を見込むという場合もあります。
このとき、住宅ローン審査は通ったものの、相手方のローン完済事務や登記手続きについて協力を得られないと、思うように所有権移転が進みません。
やはり、相手方の気が変わらないうちに、合意できるところから合意して、第三者を交えてでも書面に落とし込んでおくなどして、証拠をしっかりとしておくべきだと思います。