Q.このたび再婚するのですが、子供の苗字をどうしようか迷っています。
ちょうど小学校にあがるタイミングなので、相手方と養子縁組させて子の苗字も一緒に変えることを考えていますが、養子縁組すると相手方への責任も生じるので、もう少し検討する期間を持ちたいこともあります。
元夫から養育費をもらっており、再婚後養子縁組した場合には養育費を減額すると言われています。
養子縁組せずに、子供の苗字だけ変えることは可能でしょうか?
A.可能です。確実とは言えませんが、家庭裁判所に対して子の氏(うじ)の変更の申し立てをして審判を受けてください。
確実に審判が下りるという保証はありませんが、申し立ての動機に、母との同居生活上に支障がある旨を記載すれば、ほとんどの場合申立後に家庭裁判所に呼び出されることもなく許可の審判が下りるケースが多いと聞いています。
以下は、行政書士の立場からお伝えします。
前夫との子供を連れて再婚した場合の子の苗字はどうなるのか?
あなたが相手方と再婚し、相手方の戸籍に入る(相手方の苗字を名乗る)場合で、子供とは養子縁組せずに再婚した場合、子供の苗字は今までと変わりません。
たとえば、相手方の苗字が『甲山』、あなたの苗字が『乙田』だとします。
このとき、あなたが再婚後に相手方の苗字『甲山』を名乗る場合であっても、養子縁組しなければ子供の苗字は『乙田』のままということです。
この手続き根拠は、戸籍法に定められています
戸籍法第9条(戸籍の表示)
戸籍は、その筆頭に記載した者の氏名及び本籍でこれを表示する。その者が戸籍から除かれた後も、同様である。
戸籍に入ると、筆頭者と同じ苗字を名乗るということになります。
離婚後の戸籍の筆頭者のあなたが、婚姻届を出すことによって相手方の戸籍に入った場合、あなたが筆頭者の戸籍はそのまま存在して、お子さんがその戸籍に残ります。
つまり、お子さんはいままでの苗字を名乗りつづけることになり、母と子の苗字が違う状態になります。
子供が再婚相手と養子縁組すると、子供もあなたと一緒に相手方の戸籍に入りますので、相手方苗字と同じになります。
民法第810条(養子の氏)
養子は、養親の氏を称する。(以下略)
養子縁組をすることによる法的効果
再婚するにあたって子供の苗字も変更するためには、手続きの面だけを考えると、子供も養子縁組することが比較的簡素に終えられる手続きです。
ただし、相手方にとっても正式に法律上の親族になるわけですから、双方に法律上の権利や義務等の効果が生じます。
民法第809条(嫡出子の身分の取得)
養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。
民法第727条(縁組による親族関係の発生)
養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。
つまり、養子縁組することにより、法律上は、血縁関係のある親子とまったく同じ権利義務関係が生じることになります。
法律上実子と同じということは、生じる権利義務関係で主なものは、相互扶助義務と相続権です。
民法第877条(扶養義務者)
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
相続権については、法律上実子と同じ扱いになるのですからその権利発生は明らかです。
検討していることは子供の苗字のことですから、これも法律上明確に記されています。
養子縁組せずに子供の苗字を変える方法はありますか?
婚姻届を出して、あなたが相手方の苗字を名乗る場合を考えます。
先に記載した通り、子供が相手方と養子縁組しなければ、子供の苗字は『乙田』のままです。
ただし、再婚後も子供とは同居する予定であればなおのこと、子供も自分と同じ『甲山』を名乗らせたいと考える方は少なくないと思います。
このときは、家庭裁判所に対して『子の氏(うじ)の変更申立書』を提出して、氏の変更の許可審判を受けます。
家庭裁判所から子の氏の変更申立てが相当と認められば、その審判書と役所に対し入籍届(結婚の意味ではありません)を提出し、子供をあなたと同じ戸籍に入れることで、無事にあなたと同じ苗字に変更することができます。
養子縁組する場合と違い、苗字が変わるだけで新たな法的権利や義務は発生しないものの、手続きに少々時間がかかります。
一番時間がかかることは、新たな戸籍ができるまでの時間です。
だいたいどこの役所でも1週間から10日くらいかかることが多いです。
手続きの流れは以下の順です。
①婚姻届提出(新戸籍ができるまで約1週間)
②親と子の戸籍謄本取得(家庭裁判所宛の添付書類)
③子の氏の変更申立書提出(家庭裁判所宛。審判まで約1週間)
④入籍届提出
このそれぞれの手続きに約1週間ほどかかりますので、婚姻届後に子供の苗字が変更されるまで1ヵ月くらいはかかると思ったほうが良いでしょう。
日中に役所手続きを4度もしなければならないため、なかなか時間が取れないという方は、家庭裁判所宛の書類手続き代行は弁護士さんか司法書士さんに頼めば代行してくれるところがあります。
または、②から④の手続きはすべて郵送で手続きすることも可能ですので、時間を有効に使いたければ郵送手続きも考慮しても良いと思います。
なお、弊所では子の氏変更の申立書の手続きは、司法書士に依頼して手続き代行を行っております。
元夫からもらっている養育費はどうなりますか?
どのような内容で養育費を決めたのかにもよりますが、例えば調停で養育費をしっかりと取り決めしていたとしても、一方の生活環境が変わったことを理由に、養育費の減額を要求されることはあり得ます。
そもそも、一度決められた養育費は、双方の生活環境の変化などを理由に増額または減額の請求をする権利は双方に認められています。
もちろんそれに必ず応じる必要は無いので、養子縁組をしていないことを理由に拒否することもできます。しかしその返答に元夫が納得しない場合には、相手方から、養育費の減額調停を申立てられる可能性もあります。
ひとつの可能性として、同居する子供を養子縁組していなくても相手方の扶養家族として届けることは可能ですし、健康保険の扶養に入れることも可能です。
これら社会保険は、戸籍上でなく実態に即した運用が為されることが一般的です。
たとえ養子縁組していなくても、同居している家族であれれば、外観上少なからず扶養しているとみなされるということでしょう。
これらを根拠にすると、元夫から生活環境が変わったので養育費の減額を請求するということにはひとつの理由があります。
ただし、子供を再婚相手と養子縁組してもしなくても、実父の責任が無くなるワケではありませんので、然るべき権利は主張すべきだと思います。
個人的な意見としては、養育費を下げたくないという理由を先行させるのではなく、双方の生活環境が変化したのであれば、それぞれの事情に応じて、子の養育環境に影響しない範囲で柔軟に対応すべきではないかと考えています。
なお、児童扶養手当の支給は、養子縁組をするか否かに関わらず、再婚や事実婚の状態であることにより支給対象の要件からは外れます。
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