Q.先月離婚して児童扶養手当を申請したのですが、元夫が住民票を異動していないという理由で窓口で断られました。
離婚の半年前から別居していて、完全に別々にくらしています。
ただ、元の夫は役所などの手続き関係にズサンだったこともあり、いまでも住民票の異動をしてくれません。
離婚後の住宅ローンは、私が全額払うことに合意して離婚しましたが、今後養育費も期待できないので、早く児童扶養手当をもらいたいのです。
こちらも何度も住民票の異動を催促するのもイヤなので、手続きできる方法はありませんか?
A.はい、手続き可能な方法があります。役所の窓口で、民生委員による調査を依頼してください。
児童扶養手当は、申込み月の翌月分から支給対象になります。
ですから、元夫の住民票が異動されていなくても、まず児童扶養手当の申込みをして受理してもらってください。
その後の調査に時間がかかったとしても、民生委員の調査によって同居していない事実が調査結果として認められれば、申込み月の翌月分から遡って手当が支給されます。
以下は、行政書士の立場からお伝えします。
住宅ローン支払い負担の軽減のための手当支給申請
児童扶養手当は、、父または母と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と、自立の促進に寄与し、児童の福祉の増進を図ることを目的として手当を支給する制度です。
児童1人の場合でも全額支給対象になると月額42,910円、一部支給が認められると最低でも月額10,120円が支給されます。
月額の支給も然ることながら、児童扶養手当支給対象者には、東京都の場合ですと都営交通の無料乗車券や水道料、粗大ごみ券の優遇措置が設けられています。
銀行に交渉して所有権の移転が認められた後、夫名義や連帯債務状態でローン全額を支払うことを引き受け、子供と一緒に自宅に住み続けることになった妻にとって、認められればぜひとも受給したい手当のひとつです。
しかしながら、他の手当支給と比較しても支給対象要件が厳しく、また支給対象となっても1年に一度役所に訪問して「児童扶養手当現況届」を提出する必要があります。
所得制限もあり、実際に養育費をもらった金額の8割は所得に換算されるなど、要件も細かく手間暇もかかる制度です。
児童不要手当の支給対象者は?
障害の要件を除くと、父または母が居ない児童を養育している人で、他の要件を満たす人に対して支給されます。
要件の一部を示すと以下の通りです。
・父母の離婚により、父または母と生計を共にしていない児童
・父または母が、死亡または生死不明である児童
・父または母に、1年以上遺棄されている児童
・母が婚姻によらないで出産した児童
要件の主なものは上記の通りなのですが、役所で申請した場合、役所の担当者はまず形式で支給対象かどうかを判断します。
形式を見た場合、戸籍謄本を見れば離婚した事実は確認できるものの、住民票上で元の配偶者が同じ住所であると、形式上同居と見なされるので、児童扶養手当の支給対象外と判断されます。
たしかに、別居状態が長く続いているので、あくまで住民票上は元夫の事務懈怠のためだと言いたいところですが、役所の担当者としては形式で判断することが仕事なので、いくら事実を述べても判断が変わることはありません。
住民票上の手続きで、世帯分離と言って同じ住所に住民票を置いていても、世帯は異なるので住民票を元夫と分離させることもできます。
しかし、児童扶養手当の支給対象となるか否かの判断では、世帯分離は同居と見なされてしまい支給対象の要件外になります。
勝手に住民票を移したらどうなる?
こちらとしては、相手方が別の住所に住んでいることが分かっているのですし、たまたま離婚後も名字が同じことなどから、相手の住民票を移してしまいたくなる気持ちも起きることもあるでしょう。
しかしながら、これが相手方に分かってしまうと、犯罪に問われる可能性がありますので絶対にやめてください。
虚偽の記載ではないので公正証書原本不実記載にはあたらないかもしれませんが、少なくとも私文書偽造罪になる可能性が高いと思います。
相手方の住所が分かっているなら、委任状を申し受ければ、代理で手続き可能かもしれません。
しかし、相手方が事務手続きが苦手な場合ですと、その委任状さえなかなか返送してくれない可能性も高いものと思います。
事実として、相手方は同居せずに暮らしているにもかかわらず、しかも自分は手続きできない手段が問題になって、本来であれば支給されてもおかしくない手当を申し受けられないことは、歯がゆいことでしょう。
しかしここは、役所宛に正当な手段をもって、事実として相手方と別居していることを理解してもらうことを主張してください。
民生委員による調査の依頼申し出
相手方が住民票を異動してくれないのであれば、役所側が認める手段で、事実として相手方はもちろん、他の者と事実婚状態ではなく、母または父がいない児童を養育しているという事実を判断してもらいましょう。
具体的には、児童扶養手当の申請窓口で、「民生委員の方に現在の居住状態を調査してください。」と申し出てください。
民生委員の方によって、あなたの申し出通り元の配偶者と同居していないことが実態として確認されれば、児童扶養手当の支給対象になります。
そして、このときの児童扶養手当の支給開始月は、調査に月数がかかろうとも、申請した日の翌月からの分が支給されます。
つまり、できるだけ早く申請書を受理してもらうことが大事です。
この民生委員による調査によって同居していないことの案内は、残念ながらなかなか積極的に案内しているとは言えないそうです。
これは、決して役所側が意地悪とか不安内であるというわけでなく、本来届出しなければいけない手続きをしなくても済むような案内は積極的にできないといった理由があるようです。
ただし、こちら側に落ち度がなく事実に基づいて正当に権利を主張できるのであれば、堂々と主張すべきです。
あるいは、別れる前にこのように相手方の事務手続き懈怠が予測されるのであれば、住民票異動についても、あらかじめ委任状を申し受けておくなどの対策をしておくと良いと思います。
民生委員とはどんなひと?
民生委員さんと言っても聞き慣れない方も多いと思います。
民生委員さんとは市民や区民の生活を支援する立場にある方で、住民の立場に立つて相談に応じ、及び必要な援助を行い、社会福祉の増進に努める役割を担う方(民生委員法第1条より)です。
民生委員の職務について民生委員法第14条では次のように規定されています。
1.住民の生活状態を必要に応じ適切に把握しておくこと
2.生活に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと
3.福祉サービスを適切に利用するために必要な情報の提供、その他の援助を行うこと
4.社会福祉事業者と密接に連携し、その事業又は活動を支援すること
5.福祉事務所その他の関係行政機関の業務に協力すること
6.その他、住民の福祉の増進を図るための活動を行うこと
同条3号にのっとって、福祉サービスを適切に利用するために必要な情報を提供、援助をお願いしてください。
住宅ローンを抱えて自宅を持っていると児童扶養手当の支給対象外ですか?
弊所にも住宅ローンの相談に合わせて児童扶養手当に関する相談も受けるのですが、自宅を持っていると支給対象外だと思っている方が少なくありません。
結論としては、自宅を持っているからと言って支給対象外にはなりません。
支給申請の際に、賃貸借契約の写しの提出するように記載されているため、このように誤解される方が居られるのだと思います。
賃貸借契約の写しは、契約の事実もそうですが、入居人員を確認するために提出を求められます。
しかし、住宅ローン支払い中の持ち家の場合には、賃貸借契約書などありません。
この場合は、担当窓口の指示に従って、必要書類を求められれば提出してください。
お伝えしたいことは、決して持ち家だからとって児童扶養手当の対象外にはならない、ということです。