事例 - 王子十条行政書士事務所

離婚時に財産分与でもらった自宅の住宅ローン控除は受けられますか?

投稿日:2020年2月21日 更新日:

離婚時に財産分与でもらった自宅の住宅ローン控除は受けられますか?

 

 

 

 

Q.離婚の際、自分名義で住宅ローンを借り直して、自宅の登記名義を全部自分のものにしました

それまでは、主人がほぼ10年近く住宅ローン控除を受けています。

私の場合、あらためて住宅ローン控除は受けられますか?

A.住宅ローン控除は受けられます。離婚により共有名義であった自宅の相手方所有権を全部移転して取得した場合も同様です。

簡単な解釈として、夫から中古物件を取得した場合で、その費用を住宅ローンで賄った場合と考えれば良いでしょう。

以下は、住宅ローン診断士の立場からお伝えします。

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そもそも住宅ローン控除とは?

住宅ローン控除の正式名称は、「住宅借入金等特別控除」です。

住宅借入金等特別控除は、個人が住宅ローン等を利用して、マイホームの取得等をして自己の居住の用に供した場合で一定の要件を満たすときに、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除するものです。

具体的にはローン残高の1%が税額控除され戻ってきます。

もし年末の住宅ローン残高が2,000万円であれば、最高20万円の税金が控除されることになり、しかも以降10年間は税額控除が為されますので、受けられるメリットも大きな税額控除と言えるでしょう。

住宅ローンの利率が1%未満であれば、支払い利息以上の控除が受けられる計算になります。

住宅ローン控除を受けるには一定の要件を満たしていることが必要ということと、最初に確定申告手続きが必要であるので手続きが面倒であろうと思う方も少なくないと思いますが、金額的なメリットは十分です。

なによりも、せっかく自分名義で住宅ローンを組んで財産分与で自宅を取得したにもかかわらず、財産分与で取得した自宅でも住宅ローン控除を受けられることを知らずにいることは避けたいものです。

住宅ローン控除を受けるための要件は?

住宅ローン控除の対象となる住宅ローンは、次の1から3の全ての要件を満たす借入金等です。

一部文言は割愛します。

より細かい要件は、国税庁の住宅借入金等特別控除の対象となる住宅ローン等を御覧ください。

1.住宅ローンの利用が住宅の新築、取得をするためのもので、かつ、住宅の取得等のために直接必要な借入金等であること。

2.住宅ローンの借入返済期間が10年以上であること。

3.いわゆる銀行、信用金庫等の金融機関から借入れた住宅ローンであること。

新築資金でなければいけないなどという要件はありませんし、夫が既にローン控除を受けてしまっているので、もう控除は受けられないなどという要件はありません。

上記の要件に当てはめるとすると、財産分与により取得するために直接必要な借入金であれば、住宅ローン控除は受けられるのです。

中古物件を取得した場合の住宅ローン控除適用要件とは?

財産分与で取得した物件について住宅ローン控除を受ける要件は、中古物件を取得した場合の住宅ローン控除適用要件に準じて考えればよいでしょう。

中古物件を取得した場合のローン控除の適用要件のより細かい要件は、国税庁の中古住宅を取得した場合の住宅借入金等特別控除を御覧ください。

財産分与で取得した場合に当てはめると、注意すべきは以下の要件です。

2 住宅借入金等特別控除の適用要件

個人が中古住宅を取得した場合で、住宅借入金等特別控除の適用を受けることができるのは、次の全ての要件を満たすときです。

(1) 取得した中古住宅が次のいずれにも該当する住宅であること。

(中略)

ハ 取得の時に生計を一にしており、その取得後も引き続き生計を一にする親族や特別な関係のある者などからの取得でないこと。
ニ 贈与による取得でないこと。

後に、確定申告時に必要な書類を記載しますが、中古住宅を取得した場合とやや異なる書類は、売買契約でなく離婚協議書の写しを添付することでしょう。

離婚協議書に、該当する不動産を財産分与で取得するという記載があれば十分です。

確定申告時に離婚が成立しており、その後も別れた夫と生計を一にしないことが書類上分かれば、上記の適用要件を疑われることは無いと思われます。

また、確定申告の際には不動産の現在事項証明書を添付する必要がありますが、このとき不動産の所有権移転登記の原因に『財産分与』と記載があれば、先の離婚協議書とも整合性が取れるので、書類上はまったく問題なく受け付けられるものと思います。

問題は、そうでなかった場合です。

特に、離婚成立前に負担付贈与で所有権を移転し、後に離婚届けを提出する場合で、離婚協議書にも記載のうえ事実上の財産分与が行われたと主張する場合があります。

このとき、現在事項証明書上の所有権移転の原因には、『贈与』と記載されます(負担付贈与とは記載されません)。

この場合は、確定申告時に離婚協議書を提出しても、登記原因に贈与と記載されているため、先に記載した非該当となる要件『ニ 贈与による取得でないこと』に当てはまってしまいます。

このケースで住宅ローン控除を受けたい場合には、税務署の窓口で個別に相談のうえ、実態上は財産分与であったことを認めてもらうか、先の贈与契約を相手方との合意等により解除し、あらためて財産分与による所有権移転であると登記し直す方法があります。

ただし、登記し直す方法は、住宅ローンを受けている銀行等が抵当権を設定しているので、金融機関の承諾書面を得る必要があります。

これからの住宅ローン控除による金銭的メリットを考えると、登記し直す方法も選択肢として無いわけではないのですが、理想的には税務署さんに理解してもらうこと、そのためには根拠となる契約書類文言を整備しておくべきだと思います。

財産分与による自宅取得で住宅ローン控除確定申告に必要な書類

あなたが給与所得者の場合、必要書類は以下の通りです。

1.確定申告書A
2.住宅借入金等特別控除額の計算明細書(確定申告書に付いています)
3.金融機関からの借入残高証明書
4.住民票(申告書にマイナンバーを記載すれば不要)
5.登記事項証明書
6.離婚協議書の写し
7.源泉徴収票

1.2は国税庁等の1と2は税務署や国税庁のサイトからダウンロードできます。
4.はマイナンバーが分かれば不要です。

なお、中古住宅を取得した場合の住宅借入金等特別控除の要件で、建築年月によっては耐震基準を満たすための必要書類を求められる場合もありますので、ご自身の実情に応じて、適宜税務署や税理士さんにご相談のうえ、必要書類をご提出ください。

また、この記事を記載するにあたり税務に関する相談センター等に確認の電話を何度かしたのですが、そもそも財産分与で取得した場合に住宅ローン控除が受けられるということが今ひとつ周知されていない印象が少なからずありました(確かに税務署さんはこの時期大忙しですので他にやることがたくさんあると思いますので)。

必要があれば国税庁のホームページにも、離婚による財産分与で居住用家屋の共有持分を追加取得した場合の住宅借入金等特別控除についての記載があると主張する準備をしておいてください。

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