公正証書

離婚届け提出直前で相手に公正証書の作成を拒否されてしまったのですが・・・

投稿日:2020年3月4日 更新日:

公正証書作成を拒否されてしまいました

Q.離婚届け提出の直前に、相手方に公正証書の作成を拒否されてしまいました

離婚協議書を公正証書で作成しておかないと、どのような事態が想定されるのでしょうか?

A.金銭の請求債権が無い場合、あるいは期待していない場合、必ずしも公正証書の作成にこだわる必要はありません。

しかしながら、離婚後に月々の養育費を請求する場合は、ぜひとも公正証書にしておいた方が良い理由があります。

以下は、元銀行員で債権回収経験者の立場からお伝えします。

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そもそも公正証書を作るとどんなメリットがあるのですか?

公正証書を作る一番のメリットは、相手方が支払うべきお金を支払わなかった場合、裁判所の手続きを省いて、すみやかに差し押さえ等の強制執行ができることにあります。

反対に考えると、相手方にお金を請求する必要がない場合には、必ずしも公正証書作成にこだわる必要は無いと思います。

例えば、慰謝料等の支払いが離婚直後に一括で支払われ債権債務関係がすぐに無くなる場合や、子供との面会交流の取り決めだけをする場合などです。

子供との面会交流の約束が守られなかった場合、例えそれが公正証書に記載があったとしても、公正証書に記載されているからといって相手方の行動を強制することはできません。

もし面会交流など金銭支払い以外の約束事に強制力を持たせたいのであれば、離婚後であっても調停を申し立てて、調停調書に記載しておくことをお勧めします。

なぜなら、調停調書に記載された金銭支払い以外の事項が守られない場合は、履行勧告や間接強制という手続きが取れるからです。

元へ。

公正証書をつくるべきメリットは、証拠力が高いことや交渉役場に保存されることもありますが、何といっても裁判所の手続きを省いて強制執行ができることにあります。

公正証書の作成を拒否されてしまった場合

公正証書は、双方が公証役場に出向いて作成しますので、相手が公正証書の作成を拒否している場合は無理やりに公証役場に連れていくワケにもいきません。

ここは、相手方がなぜ公正証書の作成を拒否するのか、理由をよく聞いてみる必要があります。

ただ単に面倒であるとか、時間が無いという理由であれば、弁護士や行政書士に作成の代理を依頼することができます。

ただし、例えば養育費を請求する側は代理人に依頼しても良いのですが、相手方に支払い債務がある場合は本人が公証役場に出向いてもらう方が、後の強制執行をするための手続きが一度に済むので良いのです。

しかしながら、そもそも公正証書の作成を拒否しているのでそうも言っていられないでしょう。

公正証書作成のメリットのひとつは、強制執行が訴訟等裁判所の手続きを省いてできることなのですから、ここは裁判所で強制執行できる権利(債務名義)を抜かり無く取得できるよう準備をしておいてください。

まず、各々条文が債権を特定できるように文言をチェックして、私製でも離婚協議書を作成したら、相手方からその直近(3ヵ月以内)の印鑑証明書を申し受けてください。

そして、離婚協議書が完成したら、それを公証役場に持っていき、確定日付を取っておけば十分でしょう。

そもそも、相手方が債務の存在を認めており争いが無いのであれば、支払督促を申し立てることで比較的容易に債務名義を取得できる可能性もあります。

公正証書作成よりも難しい債権回収

他の弁護士さんや司法書士さんと比べることはできませんが、弊所ではあまり積極的に公正証書作成を勧めていません。

公正証書を作成して債務名義を取得していても、その後に強制執行をして債権を回収することの方が圧倒的に難しいので、債権回収の準備をした方がよいと助言することが主になることが多いです。

債務名義の取得手続きは、相手方が争う姿勢さえ見せていなければ、支払督促や訴訟提起で債務名義を取得することは、それほど困難ではありません。

しかしながら、無い袖は振れないもので、相手方に支払い能力が無ければ、いくら強制執行ができても回収はできないのです。

ですから、公正証書の作成を目的にするのではなく、支払いが滞ったときに、如何に回収を容易にするかを考えて置いたほうが良いのです。

特に、担保や保証人の申し受けは、支払いが滞ってからでは相手方は対応しないと考えたほうが良く、これら担保や保証人の差し入れは、離婚協議書の作成過程で相手方に要求しておくべきことです。

そして、いざ差し押さえをするとしても、相手方の資産がどこにあるのか知らなければ強制執行できません。

例えば、銀行預金であれば銀行の支店名も分からなければ、差し押さえできません。

勤務先が変わっていれば給与の差し押さえもできませんし、個人事業主や個人で会社を経営している方などですと、簡単に報酬を減額して差し押さえを回避される場合があります。

債権回収は、相手方の資産状況や勤務先をしっかりと把握しておかなければ回収不能です。

たとえ立派な公正証書があったとしても債権回収はできません。

ところが、この債権回収で一番難しい相手方の資産状況の把握について、これまでと比較してとても使い勝手が良くなると思われる法改正が、2020年4月に予定されています。

ぜひとも公正証書にしておくべき養育費の取り決め

特に長期に渡っての支払いの約束である養育費の取り決めについては、ぜひとも公正証書にしておくべき理由となる法改正があります。

2020年4月の民事執行法の法改正により、第三者からの情報取得手続という制度が新設され、裁判所からの市区町村役所等への照会により、相手の勤務先が分かるようになります。

この法改正により、裁判所から銀行の本店に照会をして、相手の銀行口座がどの支店にあるのか分かるようになると言われています。

また、これまでの財産開示手続では、相手方が手続きに応じなかったり、ウソをついて財産を隠した場合でも過料が課せられるだけだったのですが、この罰則が強化され、6か月以上の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰に変更されます。

つまり、債権回収のための財産開示手続きで財産を隠すと、前科がつくようになるということです。

先に記載の債権回収をする際に、公正証書で養育費を取り決めておくと、相手方の財産を調査する権限が拡大されることになります。

これら手続きは、これまでは裁判所の手続きで債務名義を取得しなければ利用できない制度だったのですが、公正証書を作成しての債務名義取得でも利用できるように法改正が為されます。

ですから、特に養育費債権等の長期に渡る支払いの約束を取り付けるときには、公正証書を作成しておくべきです。

もし、相手方が公正証書の作成を拒否したとしても、その後に裁判所の手続きで債務名義が取得できるような証拠を集めておく準備を欠かさないようにしておいてください。

なお、まれに養育費の金額と住宅ローンの金額がほぼ同じであるからと言って、養育費の支払いと明記せず住宅ローンの支払いを約すような文言の離婚協議書を見ることがあります。

たしかに、相手方が支払う金額は同じなので、どの名目でも問題ないと思われます。

しかしながら、例えば相手方が離婚後に破産手続きをした場合などは違いが出てきます。

住宅ローン支払い債務は、自宅の競売とともに免責されることが予想されますが、養育費として債権を持っていると、自己破産しても免責されないので、請求できる債権が残る可能性が高いのです。

それだけ、養育費債権は強い債権ですし、4人に1人しか受け取っていないと言われている養育費を保護する法整備が、徐々に進んでいる状況であるということです。

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