住宅ローン審査

元夫名義の住宅ローン借換え時、忘れてはいけない返戻保証料の取扱い

投稿日:2021年5月26日 更新日:

 

 

 

 

 

Q.離婚後に、元夫名義の住宅ローンを私が返済していましたが、このたび私名義で住宅ローンを借換えることになりました。

夫名義の住宅ローンは、私が代わりに全額繰上げ返済するのですが、このとき、元夫に保証料が返戻されると聞いています。

元夫に返戻される保証料は約20万円くらいと聞いていますが、離婚後は元夫は1円もローンを払っていません。

繰上げ返済するのも私なので、元夫に保証料が返金されることに納得がいきません。

この返戻保証料は誰のものなのでしょうか?

A.元夫名義のローンですし、保証料を支払ったのは元夫ですから、形式的には元夫が返戻金を受け取る権利があります。

しかしながら、おそらくその保証料は、新規借入当時に借入れ金額に含まれているでしょうし、その借入れをあなたが繰上返済するのですから、元夫に話して、返戻される保証料の返還請求権を譲り受けてください。

以下は、行政書士の立場からお伝えします。

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住宅ローン利用時に意外と嵩む保証料

一般の金融機関から住宅ローンを利用するとき、登記手続き費用以上にかかる費用として、保証会社宛の保証料があげられます。

この保証料とは、連帯保証人を入れる代わりに保証会社があなたの住宅ローン支払いの保証をすることの対価です。

そもそも、いま金融機関の住宅ローンは個人の連帯保証人を求めるよりも金融機関関連の保証会社を使うことがほとんどです。

保証料は、審査内容にもよりますが、だいたい融資実行金額の2%前後くらいの保証料がかかります。

例えば、2,000万円の35年返済の住宅ローンを利用すると、40~50万円の保証料を支払う計算になります。

もちろん、この保証料は融資の必要費用としてみなされますので、この金額も含めて借入れをしていることが一般的です。

最近は保証料不要をうたっている金融機関もありますが、保証料という名目でなく事務手数料という費用名目でほとんど同様の費用を請求しています。

理由は後述しますが、どちらか選べるのであれば、保証料不要の住宅ローンよりも、保証会社に対して保証料を支払う方がお勧めです。

繰上げ返済したときの保証料の扱いは?

保証会社に支払う保証料は、住宅ローンを全期間利用した場合の保証料を計算していますので、全額繰上返済して完済すると、それ以降の期間分の保証料は余分に支払った保証料ということになります。

このとき、全額繰上げ返済をした後、約1ヵ月後くらいに余分に支払った保証料が保証会社から返戻されます。

融資を利用していた金額にもよりますが、だいたい数十万円以上になることが多いです。

おおざっぱな概算ですが、35年返済の住宅ローンを利用して5年後に借換えて全額繰り上げ返済した場合、約8割くらいの保証料が戻ってきます。

もし住宅ローン利用時に40万円の保証料を支払ったとすると、20~30万円くらいの保証料が戻ることになります。

たとえば、これが住宅ローン利用時に保証料でなく事務手数料名目でこの金額を支払っていた場合は、事務手数料の返戻はありません。

これが、保証料不要(ただし事務手数料は必要)の金融機関をお勧めしない理由です。

この手段はネット銀行に多い印象をもっていますが、穿った見方をしてしまうと、この先繰上返済されても預かった保証料相当額は返さないための手段とも思われます。

離婚して相手方名義の住宅ローンを借換えた場合の保証料はだれのもの?

端的に言うと、全額繰り上げ返済をすると、保証会社から数十万円の保証料が返戻されます。

この保証料を、だれが受け取るべきなのかという話しであって、私は借換えて繰上返済するあなたが受け取るべきだという立場です。

 

自宅も住宅ローンも相手方名義であったものを、離婚にともなって財産分与で自宅を申し受け、相手方住宅ローンをあなた名義で借換えた場合を想定します。

このとき、最初の住宅ローンを利用したときに保証料を支払ったのは相手方ですから、保証会社は支払った名義人の銀行口座に保証料を戻すことが普通です。

たしかに、当初保証料を支払ったのは相手方なのですから、返戻金を受け取るのも相手方であることには理由がありそうです。

しかしながら、一般に住宅ローンを利用するときに数十万円になる保証料の支払いは、手持ちの現金でなく住宅ローンの融資金額に含めることが圧倒的に多いです。

住宅ローンを頭金なくフルローンで利用した場合は、ほぼ間違いなく保証料は当初の融資金額に含まれています。

 

このように考えると、離婚に伴う相手方住宅ローンを自分名義で借換える場合は、当初融資を利用して支払った保証料も含めて、こちらが受け取るべきと主張することにも十分理由があります。

なぜなら、相手方の融資金額には、残りの期間の保証料分も含まれていると考えられるからです。

これをしっかりと主張するためには、離婚協議書等で協議内容を定めるときに、これら保証料や過払い利息等の返還請求権の取扱いについて定めておくべきです。

返戻される保証料の請求債権を譲渡してもらうには

ここからが少し難しい話しになりますが、返戻される保証料について相手方から合意を得たとしても、説得すべきは保証会社です。

先に記しておきますが、保証会社の窓口である金融機関担当者は、全額繰上げ返済したときの返戻保証料を、名義人以外に振り込むことを相当嫌がります

無理だといって突っぱねる担当者の方が多いくらいです。

 

それでも、振込み手続きするのは保証会社ですので、このところ個人情報ガーとうるさい金融機関系の保証会社に対して、相手方以外の名義人に対して振り込ませなければなりません。

つまり、保証会社に対して『この保証料の返還を受ける権利は私にあるので、私の口座に振り込んでください。』と主張して、申し出通りに支払ってくれる理論武装が必要です。

法律用語を使うと、相手方が保証会社に対して持つ請求債権をあなたに譲渡してもらい、債権譲渡の対抗要件を具備しておくことが必要です。

民法第467条(債権の譲渡の対抗要件)

1項 債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2項 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

法律条文そのままですが、あなたが相手方から保証料の返還請求権を譲り受けたことを、保証会社に承諾してもらうか、相手方が保証会社宛に内容証明郵便等で通知する必要があります。

離婚協議書や委任状でこれらを送付する準備さえしておけば、あとの金融機関との交渉は意外とスムーズに行きます。

おそらく金融機関は、内容証明郵便を受け取るような事態は避けたいということと、法律上負けが確定するような議論には応じたくないという心理が働いてのことだと思います。

これら準備さえしておけば、『どうしても嫌なら内容証明送りますからダメならダメと言ってください。』と余裕の姿勢で構いません。

ただし、(いままでの経験ではありませんが)その保証料が譲渡禁止特約がついていて対抗される可能性もあります。

以前までの法律ですと、金融機関等との契約で譲渡禁止特約がついている(悪意・重過失の)債権譲渡は、判例等により無効とされていました。

しかしながら、これも2020年4月の民法改正で、譲渡禁止債権の譲渡をしても当事者間では有効になりました。

民法第466条 (債権の譲渡性)
2項 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。

つまり、相手方と合意が取れていれば、保証料が万が一相手方口座に入金されたとしても、その保証料は私のものなので私に支払ってください、という権利は有効です。

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