事例 - 王子十条行政書士事務所 財産分与 離婚協議書

離婚後は住宅ローンを夫が払い、マイホームには私達親子が住み続けます。離婚協議書にどのように記載すべきですか?また注意点はありますか?

投稿日:2018年11月19日 更新日:

離婚後は住宅ローンを夫が払い、マイホームには私達親子が住み続けます。離婚協議書にどのように記載すべきですか?また注意点はありますか?

Q.離婚後は住宅ローンを夫が払い、マイホームには、子供が成人するまで私達親子が住み続けます。
 
離婚するにあたって、私があまり経済力が無く、夫の方から、子供が成長するまではマイホームに住み続けても良いと提案がありました。ありがたい話しでもあるので、しっかりと書面に残しておきたいと思います。
離婚協議書にはどのように記載すべきでしょうか?

また注意点はありますか?
 

 
A.離婚協議書の記載例は以下のような例文になります。

第◯条 甲(夫)および乙(妻)は、甲の乙に対する扶養的財産分与として、甲が所有する下記不動産について、以下の条件で使用貸借契約を締結する。
1.甲は、◯年◯月◯日、本件不動産を乙に無償で貸与し、乙はこれを借り受けた。
2.本件使用貸借の期間は、本日より丙(子)が成人に達する日の属する月の末日までとする。
3.本件使用貸借期間中の、修繕積立金は甲の負担とし、修繕費用等の維持管理費は乙の負担とする。
(以下略)

 

注意すべきことは、夫の住宅ローン支払いが滞ったときのための対策をするべきであるということです
離婚協議書の記載のみでは、子供が育つまでの期間安定して住み続けられることに懸念があります。

以下は、行政書士、住宅ローン診断士の立場でお答えします。

 

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離婚時の妻側の財産分与の請求権のひとつ『扶養的財産分与』

 
離婚時に、妻が専業主婦であったり、出産、育児などの理由で就業していない場合があります。
 
このように、一方が経済的に一定水準の生活維持が困難である場合に、これまで生活水準を支えてた側が、生活水準を維持するために一方の配偶者を補助するためにする扶養的財産分与があります。
 
厚生労働省の平成28年度全国ひとり親世帯の調査結果によると、離婚時に未成年の子がいる場合、離婚後の未成年の子は、8世帯中7世帯が母親と暮らすそうです。
 
このため、住宅ローン付きのマイホームの場合、母と子がマイホームに住み続け、夫は出て行きながらも住宅ローンを支払い続けるというケースが少なくありません。
 
このように、扶養的財産分与の意味合いで、子供が成人する日まで、妻にマイホームの使用を認めるという場合があります。
このとき、夫と妻は、夫名義の自宅を無償で使用するという使用貸借契約を結ぶことが一般的です。
 
無償で借りることができる使用貸借契約は、賃料を支払う賃貸借契約とは異なり、借り手側の権利が強くありません。
ですから、所有者が変わった場合には、使用貸借契約が終了することになります。
 

離婚後に夫が所有権を失う場合

 
離婚後に夫が所有権を失う場合とは、以下の通り3つの場合があります。
 

夫が自宅を売却した場合

 
所有者はあくまで夫ですから、任意で売却される可能性があります。
 
不動産には母と子が住み続けているのですから、一般の買い主で居住を目的として購入したい場合などは躊躇してしまう物件だと思います。
しかしながら、更地にしてマンション建設を目論む不動産業者などであれば、すべてを承知して購入する場合もあります。
 
もちろん法律の知識も備えているでしょうから、正式に裁判所の手続きなどを経て、合法的に不動産の明け渡しを求めてくるでしょう。
 
離婚協議書に記載された使用貸借契約では、この手の買い主に対して対抗することができません。
 
居住者が知ることなく所有者が変わった場合などに備えて、離婚協議書に以下のような条項を記載することもひとつの手ではあります。

第◯条 本件使用貸借期間中に、乙(妻)および丙(子)が、乙の都合もしくは乙の責によらず、本件不動産からの退去を余儀なくされた場合、甲(夫)は、乙および丙の新住居への転居および入居に係る一切の費用の全額を負担するものとする。
(以下略)

しかし、その後の債権回収可能性までを考えると、有効な手段とは言えません。
 

夫が住宅ローンを払えず債権者により処分される場合

 
状況は、夫が任意で売却した場合と同じです。
しかし、住宅ローンの支払い能力が無くなったことを想定すると、離婚協議書でその後の転居や入居の費用負担を求めたとしても、その債権を回収する可能性は、任意で売却された場合よりも低いと言わざるを得ません。
 
もし、夫が自己破産などした場合には、おそらく債権は回収できないと思います。
 

夫が死亡した場合

 
夫が離婚後に亡くなってしまった場合でも、使用貸借契約は終了せず、貸主の立場を相続人が相続することになります。
 
このとき、夫が離婚後に再婚しておらず他の女性との間に子供が居なければ、あなたと暮らす子供だけが夫の不動産を相続することになるので、あくまで居住権だけを考えると一見良さそうに見えます。
 
しかしながら、離婚後に夫が再婚した場合、さらに再婚にお子さんが出生した場合などは、相続人が複数いて複雑な権利関係になることが予想されます。
 
もし、不動産の相続人のひとりに再婚後の妻がなった場合、再婚後の女性名義の家に元妻が住むことになり、感情的なシコリも生じる可能性も否定出来ないことになります。
 

離婚後の住宅ローン名義の原則

 
当センターでは、離婚後の自宅と住宅ローンの名義は、可能な限り自宅に住み続ける人の名義に一本化するべきであると提案しています。
たとえば今回のケースですと、自宅と住宅ローンの名義は、自宅に住み続けるあなたの名義に変えておくことです。
 
離婚時には、専業主婦であるなどですぐに住宅ローンを利用できない場合もあると思います。
 
そのために扶養的財産分与を受けて夫名義の自宅に住み続けるのであれば、将来就業などをして経済的に自立できそうな時期を目処に、自宅と住宅ローンをあなた名義に変える余地を残しておくべきだと思います。
 
このために、住宅ローンの支払い金額と請求できる養育費を、離婚協議書に分けて記載しておき、将来うまく自宅と住宅ローンをあなた名義に変えることができた時点で、以降は養育費を請求できるようにしておくと良いでしょう。
 
残念ながら、自分の経済力では今のマイホームに住み続けることが困難であると考えられるのであれば、夫の住宅ローン支払いに頼ることなく、自分の経済力に見合った住いを探し、子供の進学等の時期を見て転居することも考慮すべきかもしれません。

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