離婚するとき、住宅ローン取り扱いの金融機関に知らせるべきですか?

事例 住宅ローン審査

離婚するとき、住宅ローン取り扱いの金融機関に知らせるべきですか?

投稿日:2018年12月4日 更新日:

 

Q.離婚して、妻と子が自宅に住み続け、私(夫)が出て行きます。住宅ローンは今後も私が支払います。

このとき、住宅ローン取り扱いの金融機関に知らせるべきですか?

というのも、住宅ローンは離婚すると契約違反になりいきなり一括して全額請求されることがあると聞いたからです。

本当にその通りなら、どうすれば良いのでしょうか?

 

A.結論を言うと、今後の相談と同時に知らせるべきです。その前に、あわてずに住宅ローン約款を取り出して、契約条項を確認してください。

よく、離婚すると一括請求されるとおどかす者も居ますが、離婚を原因として一括請求することは、まずありません。

むしろ、ほとんどの場合一括請求される可能性は低いです。

以下は、元銀行員の住宅ローン診断士、行政書士の立場から伝えします。

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なぜ離婚後の住宅ローン利用者は、金融機関に報告すべきなのか?

この点、世の都市伝説も含めていろいろな説があります。

例えばこんな理由を耳にします。

  • 離婚をすると契約違反になるから
  • 住宅ローンには夫婦同居義務があるから
  • 離婚すると経済状況が悪くなるから

では、これらの理由が正しいかどうかを一つひとつ見ていきます。

離婚をすると契約違反になる

すべてとは言えませんが、かなり多くの金融機関の住宅ローン約款を拝読する限り、婚姻の継続を住宅ローンの取引規定に定めている金融機関はありません。

住宅ローンには夫婦同居義務があるから

民法752条には夫婦の同居、協力及び扶助の義務が記されていますが、住宅ローンの取引規定に、夫婦の同居を義務付けている金融機関は見たことがありません。

離婚すると経済状況が悪くなるから

経済状況が悪くなる場合もありますが、そうでない場合もあります。

ただし、離婚を原因として一括請求されるということでなく、経済状況の悪化を理由にして債権の保全が必要であると認めたときに、一括請求される場合があります。

これは、例えば返済している銀行口座に差押さえがあった場合や、担保として提供している不動産に差押えがあった場合など、客観的に経済状況が悪化しているという場合です。

つまるところ、離婚したことを原因として一括請求ということはあり得ません。

離婚という事実だけでなく、離婚にともなって何か別の客観的事実に基づいて、一括して請求される可能性があるということです。

住宅ローンの噂にまどわされずに、離婚前に契約条項を把握する

住宅ローンに限らず、保険やクレジットカードの約款は、小さな字で書いておりとても全部を読み込んで理解することは、それを職業にしていない人にとっては困難でしょう。

職業にしていた私自身も困難でしたから、容易に想像できます。

ですから、離婚後の住宅ローンの報告義務の要否に限って、以下の3つのポイントだけ確認すれば、離婚後に住宅ローン取り扱いの金融機関に報告が必要であるかどうか、判断できるようにします。

住宅ローン約款が手元に無い方は、いま住宅ローンを取り扱っている金融機関に連絡して取り寄せてください。
または、弊所に連絡して頂いても、手元にある分であればお渡しできると思います。

住宅ローン約款で確認すべき事項は、以下の3点です。

  1. 期限の利益の喪失
  2. 債務者の義務
  3. 届出事項

 

このうち、一括請求されるかどうかを確認するために一番大事な事項は、1.期限の利益の喪失です。

もし、あなたの利用している住宅ローン約款を見て、この期限の利益喪失の項目で、『離婚をしたとき』と書かれていれば、一括請求される可能性があります。

しかしながら、前述したとおり、期限の利益の喪失の条項で、離婚した事実に基づいて期限の利益を喪失すると定めている住宅ローン約款は、私の知る限りありません。

次の項目で、ある金融機関の実際の約款を例に、どのように書かれているか解説します。

その前に、2.債務者の義務は、そもそも約款に記載事項として無い場合が多いです。
まれに、債務者の義務を定めている金融機関もあります。

そして、3.届出事項には、住宅ローンを利用している人が、金融機関に届け出なければならない事項が記載されています。

例えば、住所や電話番号の変更、勤務先の変更などです。

ここでは詳しく説明することは省きますが、債務者の義務や届け出すべきことを怠って、1.期限の利益喪失事由に該当したときには、ローン残債を一括して請求される可能性があります。

つまるところ、住宅ローンの残債を一括請求されるかどうか最も重要なのは、期限の利益喪失事由は何かを把握して理解しておくべきでありということです。

ある金融機関の約款記載事項の実例

では、ある金融機関の住宅ローン約款を抜粋します。

ここだけの話しですが、金融機関ごとに真新しく約款を作ることはマレです。
たいていは、すでにある他の金融機関の約款をマネしていると思います。

そして、金融機関毎に少しだけオリジナリティを出すために、一部の条項を変更や追加する場合が多いです。

住宅ローン約款の期限の利益喪失項目には、大きく2つの項目がある場合が多いです。

1つは『当然喪失条項』もうひとつは『請求喪失条項』です。

当然喪失条項とは、ある事由が発生した場合に、なんの連絡もなくいきなり一括請求される事由です。

もしここに、「住宅ローン利用者の離婚」と記載されていれば、離婚した事実を事由として一括請求されてしまうということになります。

当然喪失条項

では、ある金融機関の当然喪失条項を抜粋してみます。

1. お客さまが次の各号の一つにでも該当した場合は、当社からの通知、催告等がなくても、本契約による一切の債務につき当然に期限の利益を失い、直ちに債務を全額返済するものとする。

①お客さまに破産、もしくは民事再生の申立があったとき。

②お客さまの預金その他の当社に対する債権について、仮差押、保全差押または差押の命令、通知が発送されたとき。

住所変更を怠る等お客さまの責めに帰すべき事由により所在が不明となったとき。

まず、離婚を事由とはしていないことは明らかです。

そして、①と②は、裁判上の手続きが行われた場合です。
これは、住宅ローン利用者側も予期できることだと思います。

離婚に関連しそうな事由は③住所変更を怠る等お客さまの責めに帰すべき事由により所在が不明となったとき。です。

つまり離婚後に、住宅ローン対象物件に郵送物等を送っても届かず、金融機関が債務者の所在不明になった場合です。

住宅ローンは、ローン控除を受けている人が多いと思いますので、最低年1回は金融機関から郵送物が届きます。

このときに、『あて所に訪ねあたりません』などと表示されて金融機関に返送されてしまったら、この当然喪失条項に該当してしまいます。

ですから、まずは離婚をしたとしても、現在の住宅ローン対象物件に郵便物が届くかどうか、が問題です。

離婚後に、住宅ローン対象物件に郵便物が届かないような住い方を考えている場合は、事前にしっかりと金融機関に対しての報告・連絡・相談をしておくべきです。

請求喪失条項

次に、請求喪失条項を見てみます。

2. お客さまが次の各号の一つにでも該当した場合は、当社の請求によって本契約による一切の債務について期限の利益を失い、直ちに債務を全額返済するものとする。

①お客さまが当社との他の債務について期限の利益を失ったとき。

②お客さまが当社との取引約定の一つにでも違反したとき。

③お客さまが返済を遅延し、当社が書面により督促しても、次の約定返済日までに元利金および遅延損害金を返済しなかったとき。

④お客さまが支払を停止したとき。

⑤お客さまが手形交換所の取引停止処分を受けたとき。

⑥お客さまが当社に対し虚偽の情報提供または報告をしたとき。

⑦お客さまの債務の担保の目的物について、仮差押、保全差押または差押の命令、通知が発送されたとき。

⑧前各号のほか、お客さまの信用状態に著しい変化が生じる等当社が債権の保全を必要とする相当の事由が生じたとき。

⑨連帯保証人または本契約に基づく債務の保証提携先に本項各号のいずれかの事由があるとき。

一つひとつ解説します。
つまるところは、返済が滞った場合や、返済が滞りそうな客観的事実が判明したときの、2つの事由であると考えればいいでしょう。

お客さまが当社との他の債務について期限の利益を失ったとき。

同じ金融機関で他のローンの期限の利益喪失した場合のことです。

他に何も取引がなければ関係ありません。

お客さまが当社との取引約定の一つにでも違反したとき。

厳密に言うと、届け出事項などを怠った場合も該当するのですが、それほど厳格運用してはいません。

主には、住宅ローンなのに住宅として利用していなかった場合が想定されます。

お客さまが返済を遅延し、当社が書面により督促しても、次の約定返済日までに元利金および遅延損害金を返済しなかったとき。

返済が滞った場合です。

お客さまが支払を停止したとき。

返済が滞った場合です。

お客さまが手形交換所の取引停止処分を受けたとき。

個人で手形を発行していなければ、ほとんどの場合関係ありません。

お客さまが当社に対し虚偽の情報提供または報告をしたとき。

ウソはいけません。

お客さまの債務の担保の目的物について、仮差押、保全差押または差押の命令、通知が発送されたとき。

返済が滞りそうな客観的事実が判明したときです。

前各号のほか、お客さまの信用状態に著しい変化が生じる等当社が債権の保全を必要とする相当の事由が生じたとき。

これは、解釈の問題になります。

金融機関が、離婚することが信用状態に著しい変化が生じて、債権保全が必要と判断した場合には、請求喪失条項に基づいて請求される可能性は、無くは無いですが、離婚のみを事由として請求喪失条項と判断する可能性は、極めて低いでしょう。

連帯保証人または本契約に基づく債務の保証提携先に本項各号のいずれかの事由があるとき。

上記のことは、連帯保証人にも適用するという記載です。

これらを見る限り、郵便物が届いており、きちんと返済さえしていれば、何も問題は起きないような約定になっていることが分かります。

だからと言って、届け出をしなくても良いと言いたいわけではありません。

きちんと準備をして、届け出すべき事項は届け出すべきであると言いたいのです。

結局、住宅ローン取り扱いの金融機関には報告すべきなのか?

確かに、住宅ローンの目的は、自己の居住に供する不動産の取得または増改築のために金融機関から資金を調達することです。

これに該当しないような、例えば住宅ローンを利用していながら、こっそりと他者に貸し出して賃料収入を得る目的である場合などは、借入れ条件の良い住宅ローンの悪質な利用と言えますから、住宅ローン対象物件に郵便物が届かないなどの理由で、期限の利益を喪失して一括返済ということも考えられます。

しかしながら、結婚当初はまったく想定していなかったが、やむなく離婚という選択をして、それまではもちろんその後も住宅ローンの返済を滞りなく返済しようとする債務者に対して、それほど金融機関は冷たくありません。

そして、金融機関の顔色を伺って行動を決めるのではなく、離婚後の自宅と住宅ローン名義を、どのようにすべきかの考えをまとめるべきでしょう。

その上で、届け出事項はもちろん、ローン名義の相談を一緒にしてしまうことが理想です。

当センターでは、離婚後の自宅と住宅ローンの名義は、可能な限り自宅に住み続ける人の名義に一本化するべきであると提案しています。

ですから、今回のケースでは、自宅も住宅ローンも妻の名義に一本化することを検討すべきです。

そして、住宅ローン取引規定の遵守を理由に、妻名義に一本化する相談を現在の金融機関にもしてください。

これで、報告義務は履行していることになりますし、もし金融機関が妻名義一本化に応じてくれれば、すべて解決します。

しかし、現在の金融機関が一本化に応じてくれる可能性は、極めて低いです。

ですから、平行して、あるいは先に、他の金融機関に妻名義に一本化できるように住宅ローン借り換えの仮審査などを行っておくべきでしょう。

現在の金融機関が一本化を断ったとしても、他の金融機関に借り換えて一本化できれば問題の解決になるはずです。

いずれにしても、離婚を理由として住宅ローンの一括請求を回避するためには、住所不明者にならないこと返済を滞らせないこと住宅ローン規定を遵守して必要な報告・連絡・相談をしておくことです。

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