Q.離婚するにあたり、妻から自宅の財産分与をして欲しいと言われました。名義はすべて自分(夫)の名義です。
まだ住宅ローンの支払い中で、離婚後は自分で住むつもりです。
他にはほとんど預貯金はないので、お金で精算することは困難です。
具体的には、どのように財産を分ければ良いのですか?
A.住宅ローン付き自宅も財産分与の対象になります。資産と負債が混在するときの財産分与計算をします。
以下は、行政書士の立場からお答えします。
離婚のときの住宅ローン付き自宅の財産分与
そもそも財産分与とはということから説明します。
協議離婚をする際の一方は、相手方に対して、財産分与の請求をすることができます。
不動産に限らず、預貯金や保険など、結婚後に夫婦が共同で築き上げた財産は、共有財産として財産分与を請求できます。
財産分与の対象は、婚姻中に互いの協力によって築いた財産です。
婚姻前から持っていた財産や、一方の親族から贈与を受けたり相続を受けた財産などは、財産分与の対象から除かれます。
財産分与の方法については、このように分け与えなければならない、というような決まりはありません。
つまり、課税の問題を置いておくとすれば、財産分与は互いに合意すれば良いのです。
そもそも論から言えば、財産分与をしなくても構いません。
これも、互いに合意していれば良いということになります。
そして、離婚協議の際に、財産分与の仕方について、当事者間で協議が調わない場合には、離婚のときから2年以内であれば、家庭裁判所に対して協議に代わって処分を請求することができます。
実務上は、家庭裁判所に対して調停を申し立てることが一般的です。
家庭裁判所に対して財産分与の調停を申し立てた場合に、一般的には夫婦の共有財産を2分の1に分けるように促されます。
ですから、その前段階での当事者間での協議においても、2分の1ルールに従って協議をすすめることが多いです
離婚のときの住宅ローン付き自宅の財産評価方法
財産分与の対象となる大きな資産のうちのひとつに不動産があげられます。
具体的には、結婚後に購入したマイホームなどが典型的な例です。
マイホームの財産分与対象となる評価をするために、離婚時点または別居の時点の、以下の3つの数字を集めて共有財産の評価をします。
- 不動産時価評価額
- 住宅ローン残高
- 特有財産
不動産評価額は、インターネット等で無料の不動産評価依頼をすれば算出できるでしょうし、住宅ローン残高は住宅ローン返済予定表を見れば、すぐに残高は分かるはずです。
親族からマイホームの頭金を受けたなど、特有財産があるときの評価方法は離婚時の自宅の財産分与、親から贈与を受けた分はどう評価するの?を参考にしてください。
気をつける点は、計算の基準日です。
共有財産とは、互いに協力して築き上げた財産であるという定義ですから、互いに協力しあっていた日までの財産を共有財産とします。
ですから、離婚日までとしても構いませんが、離婚するまでの間に別居していた場合などは、計算基準日を別居を開始した日とするのが一般的です。
住宅ローンの残高は、住宅ローン返済予定表を見て、別居開始日の残高を用いれば良いのですが、
不動産評価は、不動産業者などに時価評価を依頼した場合、さかのぼって2年前の不動産評価を依頼することは、少し気が引けるかと思います。
このときは、現在の不動産評価を出して、公示価格の推移などから逆算して計算する方法などを用います。
計算が面倒であるなど、やや困難である場合は当センターに、過去に遡った不動産評価を依頼してください。
簡単に特有財産がない場合の計算方法を説明します。
具体的には、以下の計算をします。
=財産分与対象額
たとえば、不動産時価が2,000万円、ローン残高が1,500万円だとします。
このときの財産分与対象額は、以下のようになります。
=2,000(万円)-1,500(万円)
=500(万円)
ですから、この500万円に他の預貯金、保険、株式などの金額を合計して、一般にはその2分の1が財産分与として請求できる金額です。
相談内容から、自宅不動産以外に預貯金等何も資産がないとすると、500万円の2分の1である、250万円を財産分与として相手方に支払い精算することになります。
あなたに支払う預貯金等がない場合には、分割して支払うことや、親族や金融機関から調達して支払うことを検討しなければなりません。
どのような返済プランを立てたらよいか、ということは、これも相手方の納得次第ということになります。
同時に養育費の請求を受けるということもあるでしょうから、場合によっては、相手から自宅を売却して精算して欲しいなどと迫られるかもしれません。
このように両者で協議が調わない場合には、あなたから家庭裁判所に対して調停を申し立てるということも考える必要があります。
妻が住宅ローンの連帯保証人になっている場合
財産分与の手段として、相手が分割支払いになかなか応じない場合は、妻が住宅ローンの連帯保証人になっているという場合があります。
離婚後にも住宅ローンの連帯保証人となっているのですから、できれば自宅を売却して、連帯保証人から外れたいという妻側の言い分も理解できます。
このときは、住宅ローンを借り換えて、相手方への財産分与の精算額まで調達して借り換えるという手段も、可能性としてあります。
具体的には、個別の事案で、その可否や可能性が違ってきますので、個別の事案として相談してください。