事例 - 王子十条行政書士事務所 特有財産 財産分与 離婚協議書

離婚時の財産分与、親から住宅ローン支援で贈与を受けた分は取り戻せるのでしょうか?

投稿日:2018年11月30日 更新日:

離婚時の財産分与、親から住宅ローン支援で贈与を受けた分は返すべきなのでしょうか?
Q.住宅購入時に、私の父親から、住宅購入資金として1,000万円の贈与を受け、夫の100%名義で3,000万円の住宅ローンを組んで総額4,000万円のマイホームを購入しました。
この度離婚しますが、自宅時価は約3,800万円と言われましたが、住宅ローン残高はまだ2,900万円あります。
自宅を売ればローンは返せるのですが、差額では親から贈与を受けた分は取り戻せません。
この場合、どのように精算するべきでしょうか?

 

A.一般論として、親から住宅購入資金の贈与を受けた部分の取り扱いと、財産分与の仕方と選択肢についてお答えします。
以下は、行政書士の立場からお答えします。

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離婚のとき、住宅ローンがある場合の財産分与

住宅ローンがある場合の自宅の評価は、自宅の時価からローン残高を差し引いて評価額を算出します。
このとき、特有財産があればその金額を差し引きます。

不動産時価 - ローン残高 - 各々の特有財産
=財産分与対象額

特有財産とは、夫婦の一方が結婚前から持っていた財産や、結婚中でも自己の名で得た財産(親から贈与を受けた資金等)のことです。
ですから、親から住宅購入資金として贈与を受けた分などは、特有財産として扱うのが一般的です。

ただ、住宅購入資金として充当された金額は、その増減率を考慮し、住宅価格の価格変化に応じて変動させます。

今回のケースでの不動産の価格の変化率は以下の通りです。

3,800(万円)(離婚時時価)÷4,000万円(購入時時価)✕100
=95%

したがって、親から贈与を受けた資金としての特有財産は、以下のように算出します。

1,000万円(贈与資金)✕95%(時価変動率)
=950万円

これを、住宅ローンがある場合の財産分与対象額評価にあてはめると、以下のようになります。

不動産時価 - ローン残高 - 各々の特有財産
=3,800(万円)ー2,900万円ー950(万円)
=▲950万円

この計算に基づくと、マイナスになってしまうので問題だということです。
 

離婚時の財産分与、原則に固執せず実態に合わせて考える

 
原則に基づいて考えると、特有財産を考慮すると自宅の評価はマイナスになるので、他に預貯金等の資産がない場合、財産分与の対象とはなりません。
そして、特有財産の評価額相当が返ってこないので、どちらか、または双方が負担するようになります。
 
しかしながら、離婚原因や離婚後の住宅の扱い、負担すべき金額などにより、原則に固執せず柔軟に考えるべき案件だと思います。
 

そもそも、離婚協議における財産分与とは

 
そもそも、協議離婚時の財産分与は、協議離婚をした夫婦の一方が相手に対して財産分与を請求するところから始まります(民法768条1項)。
 
よく誤解をされる解釈として、夫が給与所得者、妻が専業主婦の場合、夫の給与は半分妻のもの、という解釈がありますが、そうではなく、夫名義の銀行口座に振り込まれた夫の給与は、夫のものです。
 
ただし、夫のものだからと言って好き勝手に自由に使っていいというわけではなく、夫婦は、資産や収入等の事情を考慮して、婚姻にかかる費用を分担することになっています(民法760条)。
 
 
財産分与の問題に戻ります。
 
 
このとき、夫婦間の財産は、夫婦の一方が結婚前から持っていた財産や、結婚中でも自己の名で得た財産は、財産分与の対象とせず一方の特有財産として扱われます(民法762条1項)。
そして、どちらに属するか明らかでない財産は、共有財産として財産分与の対象となります。
 
もしあなたが専業主婦であっても、夫の給与は、妻が同居し協力しているから得られたもので、妻の貢献分を2分の1と考えるのが原則です。
ですから、夫の給与から築き上げられた財産は、2分の1ルールに基づいて、協議離婚時には財産分与を請求できる、という根拠です。
 
今回の事例の場合、確かに特有財産としては目減りしているものの、この間夫の給与から住宅ローンの元金100万円プラス利息相当額を支払っているので、特有財産の目減り分まで権利を主張するのでなく、円満な解決を探るべきだと思います。

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