Q.住宅ローンのあるマイホームに住んでます。自宅名義も住宅ローン名義も夫60%妻40%ですが、離婚後は妻が子供と住み続けると主張しています。それでも構いませんが、私はいま自宅を売ると手元にお金が残るので、売りたいと思っています。そして、この間住宅ローンの支払いは、全額夫である自分の口座から支払いました。
これまで支払った住宅ローン分の精算はどうするべきか、住宅ローンの名義を変更するにはどうするべきでしょうか?
A.質問を2つに分けます。
ひとつは、住宅ローンの財産分与をどうするべきかの問題。もうひとつは、住宅ローンの問題をどうするべきかの問題です。
財産分与の問題は、2分の1ルールの原則に基づいての解決策。住宅ローンの問題は、財産分与に基づいたローンの名義一本化という解決策を示します。
以下は、行政書士、住宅ローン診断士の立場としてお答えします。
離婚後の住宅ローン付自宅の財産分与
財産分与は、双方が納得できる方法で決めて構いません。
協議離婚時に、2分の1ルールを主張して2分割しても構いませんし、名義通りで双方が納得できるのであれば、それでも構いません。
名義通りでは不満であるという方が、財産分与を申し出て話し合い、話し合いで決着が付かなければ裁判所の調停などを利用して解決するという手段をとる場合が一般的です。
ですから、まずは自宅の財産分与について、名義通りでいいのか、2分の1を主張するのか、を双方で確認してください。
この場合、2分の1を主張するとすれば妻側の方でしょうから、妻の意思を確認すれば良いと思います。
そして、もし妻が2分の1を主張した場合に、夫のあなたは妻の申し出を受け入れるのか、それとも名義通りを主張すべきなのか判断することになります。
名義を、夫:妻=60:40にしたことについても何らかの理由があるでしょうから、それに基づいて話し合いをすすめることになるでしょう。
ただし、話し合いで決着がつかず、家庭裁判所の調停での協議に移った場合には、2分の1ルールで話しをまとめるように促される可能性が高いと思います。
特有財産がない場合の不動産の財産分与対象額は以下の式で計算できます。
=財産分与対象額
この金額を、双方で話し合った結果の持ち分に基づいて分けることになります。
結婚している期間に支払った住宅ローン返済分の精算
状況がすべて分かるわけではないので、確定的なことは言えませんが、住宅の持ち分にかかわらず、婚姻中に支払った住宅ローンの返済額を、持ち分に応じて精算するということはしないのが一般的です。
なぜなら、この間に支払った住宅ローンの返済がすべてあなたの給与から支払っていたとしても、その給与はあなたのものでなく共有財産とみなされるからです。
もし、自分の給与からだけ住宅ローンを支払っていて、妻の銀行口座には高額なお金が積み立てられているなどということでご不満なのであれば、夫であるあなたは、その妻の銀行口座にある金額は夫婦の共有財産であるという主張をすべき、ということになります。
いずれにしても、特別な事情や事前契約、一本の親族からの贈与などが無い限り、婚姻中に支払った住宅ローン返済額を精算はしないと考えるべきでしょう。
離婚後も自宅に住み続ける場合、住宅ローンを一方に一本化できるか?
質問内容を聞く限り、オーバーローンの状態でなく、自宅を売却すればローンは返せそうな状況でしょうから、自宅に住み続けたいと考えている方の希望がかなうのかどうかを考えればいいと思います。
今回の場合、あなたの妻が自宅に住み続けたいと言っているのですから、次の課題をクリアできるかどうか、を考えればいいと思います。
- 妻が、財産分与で決めた夫の自宅持ち分相当額を、あなたに支払って名義を一本化できるかどうか?
- 妻が、あなたに支払う金額も含めて資金調達(住宅ローンの利用)ができるかどうか?
以上の2点が課題になります。
例えば、妻側の親族が、それら資金負担をすべて賄ってくれるというのなら、話しは早いです。
夫が、自宅を売りたいという主張は、手元に資金を残しておきたいということでしょうから、あなたの持ち分を実質的に妻側に売却することによって、目的は達成できると思います。
しかしながら、金額は分かりませんが、自宅を購入のための精算となると、ある程度のまとまった資金が必要でしょうから、住宅ローンの利用を検討するということになろうかと思います。
妻が住宅ローンを利用できるかどうかは、妻の勤務状況や年収、信用情報などによって審査されますから、それら情報を提供していただければ、可能な限り審査可能な金融機関をさがしてみる、ということが今できる回答です。
共有名義の住宅ローン一本化・まとめ
手順として、以下の順に協議、検討していくことになります。
- 自宅の財産分与の割合・持ち分を決定する
- 自宅はどちらが住み続けるのかを決定する
- 自宅に住み続ける方が、もう一方の自宅持ち分相当額を支払い精算する
- 3.およびその後の自宅購入資金資金調達方法(住宅ローン利用)を検討し決定する
以上です。
言葉だけだと簡単になるかもしれませんし、話し合いには感情的な問題も生じるかもしれません。
必要に応じて、裁判所等の公的機関や専門家を間に入れて、可能な限り円満な解決策を選択できるようにしてください。