ペアローン | 王子十条行政書士事務所 離婚協議書

離婚後のペアローンを相手方分も自分で払い続けたいのですが、銀行にはどのように伝えるべきですか?

投稿日:2020年10月26日 更新日:

離婚後のペアローンを自分で払い続けることができますか?

 

 

 

Q.マイホームをペアローンで購入しました。離婚後は夫が出ていき、共有名義の自宅に私と子供が住み続けます

夫は、離婚後のローン支払いはしないと言っておりますが、離婚後も自分で相手方分も含めてローンの返済をし続けるつもりです。

このとき、住宅ローンを利用している銀行に対してはどのように説明するべきでしょうか?

なにか、注意点があれば教えてください。

A.離婚協議書で、相手方債務を引き受うけて、財産分与で所有権を移転することを約定してください。

ただし、登記名義を変更することは、事前に銀行の承諾が必要になる場合が多いです。

事前に約款などを確認をしておくべきでしょう。

以下は、元銀行員で行政書士の立場からお伝えします。

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離婚後のペアローンの取り扱い

ペアローンとは、ひとつの住宅に夫婦それぞれの2本のローンが付いているものです。

債務者はそれぞれですが、相手方分の債務にもう一方が、それぞれ連帯保証人になっていることがほとんどです。

しかしながら、連帯保証人になっているにもかかわらず、これからは連帯保証人が弁済し続けるので、相手方の返済分を連帯保証人の口座から引き落として欲しいと申し出ても、受け付けてくれない金融機関がほとんどです(民法474条により法律上の根拠はないのですが)。

銀行の対応はひとまず置いておき、双方の離婚協議内容を書面にまとめる準備をします。

まず、離婚後に相手方さんはローンを一切支払わないとのことですから、離婚日以降は自分が全部ローンを引き受けるということを、互いに確認し合意します。

法律上の言葉では、併存的債務引受と言います(以前は、重畳的債務引受という言葉もよく使われました)。

併存的債務引受の要件効果については、今年4月から施行された改正民法に、その要件及び効果が470条に新設され明文化されました。

銀行に何を言われようが、併存的債務引受は両者間で有効です

民法470条3項

併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。(後段略)

ただし、後段に次の文言があります。

民法470条3項(後段)

この場合において、併存的債務引受は、債権者(筆者注:銀行等)が引受人となる者に対して承諾をしたときに、その効力を生ずる。

つまり、銀行が『いいよ』と言わなければ、とりわけ銀行に対しての効果は無いということになります。

個人的意見と経験に基づいて申し上げれば、銀行が承諾する可能性はほぼゼロでしょう。

しかしながら(よくこの点で銀行さんと意見が衝突するのですが)、今回債務引受けをする者が見ず知らずの第三者ならともかく、連帯保証人になっている者です。

併存的債務引受の観点とは別に、債務者本人は返さないと意思表示をして、連帯保証人が債務者に代わって支払うと言っているのですから、特に改正された民法上の規定に従うと、銀行は返済を受け付けるべきであると考えています。

民法474条(第三者の弁済)

第1項 債務の弁済は、第三者もすることができる。

第2項 弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。(後段但書略)

連帯保証人は、債務者の返済をするにあたり正当な利益を有すると解釈すれば、やはり銀行は連帯保証人からの弁済を拒否できないと思うのですが、ある地方銀行さんでは『法律上の根拠は無いけどウチには前例が無いので無理。』と前例主義を持ち出されて拒否されたことがあります。

改正民法は施行されているのですけど。

 

元へ。

いずれにしても、両者の間での債務引受けという観点でも、連帯保証人であるという点でも、あなたが債務を引受けて支払うことは、少なくとも当事者間では有効です。

そこで、相手方さんに対しては、仮にも金融機関から弁済の請求があった場合でも、自分がローンを引き受けるということを明確にするために、次の文言を入れておくと良いでしょう。

『甲(夫)と乙(妻)は、本件債務の求償に対する負担割合を、乙が全部とすることに合意する。』

これで、双方の間で債務の引受け者はどちらであるか明確になります。

注意すべきは自宅所有権の移転時期

離婚後に自宅の名義一本化の相談を受ける際、離婚時の離婚協議書を持ち込んで相談を受けるのですが、特に財産分与の記載について間違いが多いです。

よくある間違いは、『(夫が)住宅ローンが完済した後、財産分与として自宅不動産を(妻に)譲渡する。』と書かれている協議書です。

状況から察するに、あと2年で住宅ローンを払い終える予定とは見られなかったことから、おそらくローンを完済する数十年後に所有権移転登記をする、という趣旨だと思われます。

しかしながら、(これも違う解釈はあるのですが)財産分与は除斥期間が離婚後2年間とされています。

つまり、離婚後2年を経過してから、財産分与を原因として物を渡すことはできません。

・・・が、離婚協議書には数十年後に財産分与すると記載されてしまっています。

正しく記載すべきは、『先の住宅ローンを併存的に引受けると同時に財産分与として所有権を移転する。』旨の記載です。

確かに、登記名義を変更するにあたっては金融機関の承諾が必要な場合が圧倒的に多いですし、それを承諾する金融機関は圧倒的に少数です。

しかし、金融機関が承諾しないことは、所有権移転登記であって、所有権移転を禁じているワケではありません。

所有者が変わることと、登記名義が変わることは、必ずしも一致しません。

そもそも、不動産などの物の所有権移転は、当事者の意思表示のみによって効力を生じます(民法176条)。

金融機関に対しての報告、承諾はともかく、財産分与による所有権移転は明確にしておくべきです。

理想的解決策は、ローンのまるごと借り換え

ペアローン利用中の金融機関に対して、先に記載したように、これからは相手方分も含めてあなたが支払い続けるので、名義変更したいと申し出ても、ほとんど受け入れられないと思います。

弊所でも、ペアローンを利用中の名義変更手続きは承諾された経験はありません。

理由として想像されることは色々とあるのですが、やはりローンが2本に分かれていることが話しを複雑に解釈されると思います。

仮に、同じ金融機関内で相手方分のローンの名義を変更されたときには、同じ物件に対して、同じ債務者名義の2本のローンが付くことになります。

この点を嫌がる銀行担当者は多いと思います。

 

ここは、あえて別の銀行での借り換えを申し出て、2本あるローンの一本化を目指したほうが、話しは早いと思います。

借り換えをすると現在のローン残高の約10%くらいの諸費用がさらに加算されます。

しかしながら、相手方名義の住宅ローンを自分名義に変えることによって、住宅ローン控除を受けられるメリットを考えると、経済的価値から諸費用分が浮くかトントンくらいにはなると思います。

先の離婚協議書(案)が作成できた段階で、利用中の金融機関でなく、他の金融機関に対してローン利用の相談をした方が、何かと早く手続きは終えられると思います。

相手方のローンを肩代わって支払う際、忘れずに合意しておくべきこと

相手方のローン債務を引受けて支払い続ける場合はともかく、他の金融機関に打診して相手方ローン債務を繰上げ返済する際に、もうひとつ相手方と合意した方が良いことがあります。

それは、繰上げ返済時に返戻される保証料の返還請求権を譲渡してもらうことです。

一般に、現在の住宅ローンのほとんどは、ローン実行時に保証会社に保証を委託し、その対価として保証料を支払います。

金額は、借入金額にもよりますが、借入金額の約2%くらいです。

3,000万円のローンを利用しているとした場合、一括支払いの保証料は約60万円という計算になります。

保証料は住宅ローン利用時の必要費用として認められていますので、ローンの残高にはこの保証料も含まれていると思っても良いでしょう。

ローンを繰上げ返済する場合、約定にもよりますが、繰上げ返済して保証する必要の無くなった期間の保証料は、債務者に返戻されます。

他行で借り換えて名義を一本化できる場合、相手方ローンを肩代わって全額支払うのですから、この保証料の返還請求権は先に譲り受けておくべきでしょう。

なお、これまで譲渡禁止とされていた債権の譲渡は、判例等により悪意・重過失(譲渡禁止を知り、また重大な過失により知らなかったこと)の場合無効と解釈されていたものが、今年4月の民法改正により、たとえ譲渡禁止債権であっても当事者間の譲渡は有効であると明文化されました(民法466条2項)。

想像するに、おそらく保証料の返還請求権が譲渡禁止であろうことなど約款には書かれていないものと思います。

この通りであれば、保証料の返還請求権を譲り受ける旨を離婚協議書に記載し、第三者対抗要件を具備しておくことで、保証会社に対して正当に返還請求することができるはずです。

ただし、銀行さんや保証会社からは相当嫌がられるか、法律上の根拠のない理由を持ち出して拒否されることがあると思います。

本年4月に施行された改正民法に基づく法律上の根拠でもあることから、金融機関も未だ知り得ないということもあるでしょう。

弊所で対応する場合は、法律に基づいて粛々と書面にて交渉を続けて、最終的には銀行さんに納得してもらいます。

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