離婚協議書

離婚した後住宅ローン完済後に自宅を財産分与。よくある離婚協議書の間違いとは?

投稿日:2020年10月29日 更新日:

離婚した後住宅ローン完済後に自宅を財産分与。よくある離婚協議書の間違いとは?

Q.離婚後、夫名義のマイホームに私が子供と住み続けることになりました。住宅ローンは夫が払い続け、完済後に自宅を財産分与でもらう約束です。

この間本当に住宅ローンを返済してくれるのか心配ですし、将来住宅ローンを返済し終わった後に、名義変更の手続きをしてくれるのかも不安です。

公正証書を作っておけば良いのですか?

 

 

 

 

A.公正証書では問題は解決しません。離婚協議書の特に財産分与の記載に気をつけてください。

多くの間違いは、財産分与による所有権の移転時期が数十年後、またはあいまいになっていることです。

または、所有権移転について全く記載されていないモノもあります。

相手方さんが途中で亡くなったときのことも考慮しておくべきでしょう。

以下は、行政書士の立場からお伝えします。

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意外と間違いの多い離婚協議書の文言

離婚後に自宅の名義一本化の相談を受ける際、離婚時の離婚協議書を持ち込んで相談を受けるのですが、特に財産分与の起算点について間違いが多いです。

公証役場で公正証書をつくった方でも、この文言では将来トラブルが起きるであろう文言が散見されます。

以下、弊所で実際に相談を受けた方の具体的に将来問題が起きそうな離婚協議書、公正証書の文言を記します。

以下、甲と書かれていた者を夫、乙と書かれていた者を妻として記載します。

夫は、本件不動産のローン残債務が全額返済された後、速やかに妻に対し本件不動産を無償で譲渡する。

この文言は、実際に公正証書に記載されていた文言通りです。

弁護士や行政書士に文書作成を依頼せず、当人同時で公証人に直接依頼して公正証書を作成したと伺っています。

公証人は依頼通りに公正証書を作成しますので、おそらくこの通りの申し出をしたのだと思います。

しかしながら、これでは住宅ローンを支払い終わった後、財産分与でなく贈与を受けることになります。

離婚が成立した後ですから、夫婦間で居住用不動産を贈与したときの2,000万円控除は使えませんので、不動産評価額にもよりますが、贈与税が課税される可能性が高いと思います。

夫は妻に対し、住宅ローンの返済に充当するための財産分与として、〇〇年▽▽月から25年後の△△年□□月まで、1ヵ月あたり金10万円を支払う義務のあることを認め、これを毎月末日限り支払う。

これも実際に公正証書に記載されていた文言の趣旨と同じでです。

住宅ローンを完済まで支払わせたいという意図は分かるのですが、一定の金額を25年間払い続けるということが財産分与になるのか、というとかなり疑問です。

仮に、離婚後2年間は財産分与として支払われるとしても、その後の支払いは定期贈与として捉えられかねないと思います。

定期贈与と見なされると、契約した時点で総支払予定総額に対して贈与税が課税さるはずです。

それ以前に、この公正証書には自宅の所有権の所在が明記されていません。

文言を素直に読むと、妻は、別れた夫名義の家に住み続けることになります。

住宅ローンを支払い終えても、所有権は引き続き夫のままということです。

『離婚後、オレが死んだら自宅をあげる』ことを確実に約束させることは不可能

離婚した後も名義は夫のままで住宅ローンを払い続け、自分が死んだときには自宅はあげる、という約束を離婚協議書に記載してあるという方で、以下のような文言の離婚協議書を持参した方が居りました。

夫は、本件債務の履行中に自らの相続が開始した場合、妻に遺贈することを約す。

結論から申し上げると、離婚協議書中のこの文言は無効です。

おそらく、自分が支払い続けていた方が、万が一のとき団体信用生命保険がおりるので、借金なく自宅がそっくり自分の物になるであろうと約束を信じてこのような約束になったものと推察されます。

もし、夫の死亡時に自分に自宅を渡すよう約束させたいのであれば、その手段のひとつとして、遺言を書いてもらうという方法があります。

ただし、遺言の方式は法律上、かなり厳格にその要件が定められております。

民法960条(遺言の方式) 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することはできない。 

少なくとも、離婚協議書中の文中でその意思を反映させることは無理でしょう。

ひとつの方法として、先に記載した内容の遺言を書いてもらい、形式上も不備なく記載通り執行されれば、ご希望通り前夫の死亡時に自宅を自分の物にすることができます。

ただし、この方法も完全ではありません。

たとえば、離婚後に再婚された場合などのことにより、遺言を書き直される可能性は排除できません。

遺言を、以降絶対に書き換えない、という約束をいくら書面にのこしても、そのような約束は無効です。

先の遺言作成以降に、その記載を撤回する内容の遺言を作成された場合、後に記載された遺言の方が有効になります。

 

遺言が法律上の要件を満たして存在していた場合であっても、前夫が再婚したときには、その再婚相手が法定相続人になります。

このとき、先の遺言が有効になり文言通り執行され、自宅所有権が100%遺贈されたとしても、後妻さんから遺留分侵害請求される可能性があります。

遺留分侵害請求権とは、かんたんに言うと、法律上自分が相続すべきだった財産の半分を請求する権利のことです。

もちろん、法律上認められた権利です。。

本来法定相続人が得られるべき金額が、被相続人の遺言等により受けられなかった場合、法定相続人が本来得られるべき金額の半分を、他の受遺者や受贈者に対して請求できるのです。

前夫が再婚していた場合、後妻さんから、最大不動産評価額の2分の1の金額を請求される可能性があります。

 

つまるところ、死亡時には不動産を無償であげるから、という約束を将来に渡って確実に約束させることは出来ません。

相手方名義のローン返済中の自宅の財産分与、もっとも注意すべきこと

結論として、相手方が住宅ローンを支払い続けることを約束する場合であっても、できれば財産分与で所有権を移転するということを約束するべきです。

よく、住宅ローン支払い中は、名義変更できないのではないかと指摘をされることがあります。

が、これは登記名義を銀行の承諾なく変えてはいけないという約定に基づくものです。

所有権は移転しておき、登記手続きを留保しておけば、少なくとも登記名義については金融機関の約定に違反するワケではありません。

さらに心配なら、所有権移転に抵当権解除などを停止条件とする仮登記を付けておけば、知らないウチに第三者に売却されるおそれもほとんど無くなります。

ただし、夫が金銭的にルーズで、税金をよく滞納してしまっていたり、他に沢山の借財があり返済が滞っている場合などは、所有権移転登記をしておかないと差し押さえられる危険は残ります。

やはり弊所としては、離婚後には住み続ける人に自宅もローン名義も変更すべき、というスタンスです。

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